2009年08月31日

「中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす」 生の中国事情を知るために



成長市場、新興国の代表と言えば、まさに中国。だが、共産主義国にして、日本以上の競争原理を導入し、貧富の差も激しい。少なくとも僕は、中国という国をよく知らないし、日本とあまりに違う体制に、ピンとこないところも多い。

そこで、中国を知るべく、いくつかの本を読んでみることにした。

タイトル通り、本書は日本アニメの中国での隆盛を描いている。だが、著者はアニメ業界の人物ではない。アニメとは縁遠い1941年生まれの筑波大学名誉教授。ただ、アニメとは縁遠いが、中国への造詣は半端ではない。そんな中国の専門家ながらも、アニメは素人という先生が日本アニメ事情を追っている。

この本の素晴らしい点は、「アニメ素人」の徹底した取材だ。中途半端な自称「ジャーナリスト」真っ青の取材ぶり。若い人にも直接話を聞き、中国高官にも、ネットの書き込みにも、考えうるあらゆる方法で迫っていく。しかも、著者の中国での幅広い人脈をフル稼働だ。

中国での日本アニメの普及には、海賊版が大きな役割を果たしたこと。中国の若者が日本アニメを通じて、自由や民主主義の空気に触れているという現実。一応は共産主義国である中国だけに、日本アニメの放映時間制限などで、思想統制をかけている実情を明らかにしていく。

本書の内容は、日本アニメの中国での普及にとどまらない。特に後半は日中外交史、中国での反日感情の根源と現実にまで話が広がっていく。日本アニメの実情を追った前半の冷静な筆致と比べて、後半は中国に思い入れたっぷりの著者の熱い気持ちが全面に出ている。

日本アニメを見て育った中国の若者たちが、なぜ反日暴動に熱狂してしまうのか。中国は経済で日本と深いかかわりがあるにもかかわらず、なぜ反日教育を止めないのか、あるいは止められないのか。著者の中国への深い理解と中国での日本アニメ事情から浮き彫りにしていく。中国での共産党と国民党との闘争の歴史、アメリカなどでの華僑の動きまで視野は広がっていくのだ。

中国関連の本というと、先入観だらけの思想本であったり、単純に数字をなぞったようなものも多いけれど、この本は中国のアニメ事情、若者の文化論、さらには中国現代史から国民性にまで話が及ぶ。しかも、中国で生まれ、中国に深くかかわってきた著者の徹底した取材と分析だけに、まさに「生の声」に迫っている感がある。

中国の実情、特殊性など、まさに生の現実がある。中国での日本コンテンツ事情だけにとどまらない、中国の「いま」をつかむための、最適の一冊だろう。
posted by Bacchus01 at 08:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする






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